アカデミー6部門ノミネートも無冠に終わった傑作フィルムに埋もれた、これまた感動バラード Help Yourself by Sad Brad Smith
『マイレージ・マイライフ』という映画をご存知でしょうか?
2009年に公開されたこの映画、ジョージ・クルーニーやアナ・ケンドリックなど超実力俳優により彩られた素敵なヒューマンドラマ映画です。アメリカが舞台のこの映画。ジョージ・クルーニー演じる主人公ライアンは、全米を飛び回り、日々企業のレイオフを宣告する仕事をしています。人材派遣会社の社員として、派遣した従業員の解雇を宣言して回るという辛い仕事。クビを宣告される人たちはライアンに自分のドラマを語りますが、主人公ライアンは淡々とレイオフを突然告げていきます。
そんな無骨に見える彼にも一つの楽しみがあり、それは飛行機で世界各地を旅して回ること。長い間深い仲である女性、アレックスとともに。また彼には人生をかけた目標もあります、それは全米最年少の1000万マイル達成者になること。
「人間関係や荷物の負担で悩むことがない」として一生独身でいることに美徳を感じ、それを貫いてきたライアンは、新しく入ってきた若手社員、アナ・ケンドリック演じるナタリーと親友のアレックスの影響で、自分が貫いてきた哲学に疑問を抱くようになります。(どんないきさつなのか、映画を御覧ください)
ースーツ姿のジョージ・クルーニーは車を走らせ気持ちを昂ぶらせながら親友のアレックス家に突撃します―
そしてクライマックスでは
ライアンは最年少1000万マイル達成を機内で告げられ、機長から "Where are you from" あなたはどこから来たのですか?と尋ねられ、
ナタリーは自分がレイオフを告げた人が自殺してしまったことを告げられ仕事を辞めてしまう。
自分の人生哲学を通してきた男は、フライトスケジュールの掲示板を見上げ、スーツケースから手を離し、映画は終わります。
小説が原作のこの映画、第82回アカデミー賞で6部門にノミネートも無冠。ただゴールデングローブ賞の受賞や、ニューヨーク・タイムズが選ぶ今年のベスト映画に選ばれたり本当に素晴らしい作品です。そして『マイレージ・マイライフ』("Up in the Air")をより深みのある作品に仕上げたのは織り交ぜられた音楽たちです。
エンドロールで流れる "Up in the Air" は映画のために作られたものではなく、監督が偶然みつけた、ケヴィン・レニックのオリジナルソング。作品のなかで主人公がたどる心模様が、なんと完璧に詠まれているんです。映画が製作を始める前の音楽なのに。こちらもとても素晴らしい音楽なのですが、今回は劇中に使われたなかで心に残ったもう一つの曲を和訳とともに紹介します。
Sad Brad Smith の "Help Yorself"
[Verse1]
I know you'll help us when you're | 僕は知ってるんだ |
Feeling better and we realize | 気分がよくなったら君は僕たちを助けてくれるって |
That it might not be for a long, long time | でも長くは続かないってことも気づいてる |
But we're willing to wait on you | それでも僕たちは待つんだ |
We believe in everything that you can do | 君のできることすべてを信じてる |
If you could only lay down your mind | 今の君が自分の気持ちを落ち着かせることしかできないとしても |
I want you to try to help yourself | だって君には自分のことを大切にしようとしてほしいから |
[Verse2]
Take the time to take apart | 取り除く時間をとろう |
Each brick that sits outside your heart | きみの心を覆ってる一つ一つのレンガをね |
And look around you | そうしたら周りを見渡してみてよ |
There's people everywhere | みんながいるだろ |
And though they don't always show it | みんな心を開いてるわけじゃないけどね |
They're just as scared and we'd be more prepared | みんなはただ恐れているだけ。僕らはもっと恐怖に身構えられるんだ |
If you just pulled on through | もし君が乗り越えたらね |
I want you to try to help yourself | だって君には自分のことを大切にしようとしてほしいから |
Oceans of water underneath our feet | 僕らの足の下にある水の海 |
Terrible design | ひどいデザインだ |
Dusty rooms you cannot sweep | きみが手に負えない汚い部屋が |
Are clouding up your mind | 君の心を晴らしていく |
I know you'll help us when you're | 僕は知ってるんだ |
Feeling better and we realize | 気分がよくなったら君は僕たちを助けてくれるって |
That it might not be for a long, long time | でも長くは続かないってことも気づいてる |
But we're willing to wait on you | それでも僕たちは待つんだ |
We believe in everything that you can do | 君のできることすべてを信じてる |
If you could only lay down your mind | 今の君が自分の気持ちを落ち着かせることしかできないとしても |
I want you to try to help yourself | だって君には自分のことを大切にしようとしてほしいから |
I know you'll help us when you're | 僕は知ってるんだ |
Feeling better and we realize | 気分がよくなったら君は僕たちを助けてくれるって |
That it might not be for a long, long time | でも長くは続かないってことも気づいてる |
But we're willing to wait on you | それでも僕たちは待つんだ |
We believe in everything that you can do | 君のできることすべてを信じてる |
If you only lay down your mind | もしきみが心を落ち着かせること以外何もしなくても |
I want you to try to help yourself | だって君には自分のことを大切にしようとしてほしいから |
劇中で主人公が自分の心境に変化を与えるイベントが起きている時、この曲はBGMとして流れます。
"Help Yorself" は、主人公が自分の人生哲学を考えなすきっかけとなるあるイベントに出てくる男が、自分自身に問いかける歌のようにも、ともに世界を旅する親友のアレックスの影響で心境が変化した想像上の未来の主人公が、独身を貫いている今までの自分に語りかけているようにも感じられるんです。まさにここ!というところでこの曲は流れます。 とりわけメッセージ性が強いとか音楽性が強いということではないですが、一度でもこの傑作ヒューマンドラマ映画の中で、この音楽を聴いたならば、それはずっと心に残る温かいバラードになります。Sad Brad Smith はアメリカのシンガーで決してメジャーな方とは言えませんが、知名度が高くなくてもいい作品はあるんだと、いつもこの歌は思い出させてくれます。
ぜひ映画の中で聴いてみてください。